1.事故の概要 今回採り上げる事例は、介護保険制度開始以前の平成11年12月に発生したものです。認知症の高齢者山田さんは、A医院でデイケアの治療を受けるため通院をしていました。通院の介助は、A医院の介護士佐藤さんが行っていました。佐藤さんは、デイケアの際の介護も行っています。事故が発生したのは、デイケアが終了し送迎バスで自宅マンションの前に戻ったときです。介護士佐藤さんは、山田さんを送迎バスから降ろした後、踏み台の片付けやスライドドアを閉めるなどの作業をしていました。そのとき、山田さんの声が聞こえたので振り返ると山田さんが転倒しかかっていたので手を差し伸べたのですが、転倒を防ぐことができず山田さんは転倒してしまいました。山田さんが転倒した場所は、歩道の舗装部分と未舗装部分の境目で、やや未舗装部分よりのところでした。山田さんは、転倒により右大腿頸部骨折と診断されB医院に入院しました。 山田さんは、B医院で手術を受けましたがベッドに寝たきりの状態になり、食欲も低下していきました。そして、約1ヵ月後に肺炎に罹患し治療をしましたが、約4ヵ月後に転院先の病院で肺炎が原因で死亡しました。
(当事者等) 被害者=山田さん 被害者の相続人=山田夏子さん(妻)、山田秋子さん(長女)、山田春子さん(次女) 介護士=佐藤さん デイケア提供施設=A医院 事故後入院先施設=B医院 (いずれも仮名です)
2.被害者からの請求 被害者である山田さんの相続人妻の山田夏子さん、長女秋子さん、次女春子さんの3人から、A医院に対して損害賠償金などの請求がなされました。
※ 民事訴訟で、訴える側を「原告」、訴えられる側を「被告」といいます。 本件では、夏子さん、秋子さん、春子さんが原告で、A医院が被告になります。 ちなみに、刑事訴訟では「被告人」といいます。
3.裁判所の判断(判決) 裁判所は、損害賠償請求を認めA医院に対して、夏子さんに3,080,707円、秋子さんと春子さんに各1,892,719円を支払うよう命じました。(これには、年5分の利息も付けられています。) |